水路探検隊 長沢川を行く1/3【ノーカット版】

ノーカット版に際しまして

第4回まつもと一箱古本市の関連企画「松本の本」に「水路探検隊 長沢川を行く」を寄稿させていただきました。

やはりヒト様の目に触れるからにはと推敲に推敲を重ねて寄稿したのですが、その際、ページの関係から内容の半分をけずりました。

うすうす気づいていたのですが、やはり水路探検は楽しくてついつい書きすぎてしまったのです。

と、言うことで紙面の関係上省いた部分を含めまして、推敲を全然していないノーカット・ノーディレクターズカット版をこちらにて紹介させていただきます。推敲前のモノですので「松本の本」ですら駄文なのがさらに駄文となっていますが、内容的には松本市街を流れる長沢川を上流のはじまりから、下流の合流地点のおわりまですべてを紹介しています。

もし読み比べていただける奇特な方がおられましたら「松本の本」も読んでいただけたら幸いです。

他にも松本の街の魅力を伝える記事であふれている一冊になってます!

水路探検隊 長沢川を行く!

 伝説の歴史書「松本市史」にはこう書いてある。

 松本城下を流れる河川には、城下の東側を南流し、やがて東西にむきをかえて西流する女鳥羽川と、薄川の支流で東西に流れる長沢川とがあった。前者は城下を川北と川南に分断し、後者は本町と博労町をわけた。

 何? この神話調の言い回しは! ぼくはドキドキした。

水路が気になる!

 「路」や「道」と名の付くものが大好きだ。いや、愛している。路地なんかよだれが出るほど好きだし、街道も好きだ。でも鉄塔や煙突なんかも好きだから、もしかしたら細くて長いものが好きなのかもしれない。ともあれ、そんな偏った趣味なので、気になるものを見つけるとにやにやしながら街を徘徊することになる。

 すてきな路地やなんかを探して松本の街を夜なさまよっていると、否応なしに目につくものがある。水路だ。松本の街は山に囲まれ伏流水が多い。湧水はそこかしこで沸き、集まり、時には分かれて、水路をなしている。深夜の街はとても静かで水の流れる音が際立つのだ。

一度で何杯も楽しめる水路は魅力だらけ

 でもなんでそんなに水路が気になるのだろう。今まで灯台にしろ道祖神にしろ欲望のおもむくまま見に行ったり行かなかったりしてきたので好きなものについてその理由をじっくり考えたことがなかった。

 そこでちょっと考えて思いついたものを羅列してみる。水路の魅力は歴史的・地理的観点、異国に迷い込んだような雰囲気、そして人生的な振る舞いではないだろうか。

 水路は渓流などと違い多かれ少なかれ人工的に引かれたものと自分は考えている。となると自ずと灌漑用だったり生活用だったり人々の生活に密着してくる。そこには歴史的な経緯があるはずだ。実際水路沿いを歩いてみると古い石碑や構造物に出くわす。往時に思いを馳せ想像を膨らまし楽しむのだ。

 では地理的観点ではどうだろう。水路を見て回る際、ときどき暗渠などになってしまい、見失ってしまうことがよくある。だけど水は高いところから低いところへ流れる。そんな時は地形を読み解き周辺を探してみればよい。するとうまい具合に見つけられる時があるはずだ。その時の喜びは筆舌に尽くしがたくは全然ないけれど、結構うれしい。

 異国的というのは普段と違った観点で街を歩くと、見知っている街なのに異国を歩いているように感じられることである。普段車で移動している人が自転車に乗ってみたら景色が違って新鮮な気持ちになるのに似ている。ふだん水路なんて観点でいつもの街を切り取ったりなんかしないので、ちょっと歩いてみるだけで旅先のようなワクワク感を得ることができるのだ。

 最後に人生的な振る舞い。水路なり河川なり、水源や分岐などの始まりがあって、合流や海に出て終わりがある。途中には田畑を潤したり、生活用水として利用されたり、はたまた進む先で暗渠に入り日の目を見ないこともままある。山あり谷あり。まさに人生的である。「〽ああ川の流れのように」の逆、水路は「〽ああ川は人生のように」だ。上流から下流まで歩くとまるで自叙伝を読んだような気分に浸ることができるのである。

 街中の水路はたぶん長くて数キロだ。半日あれば歩ける。たったそれだけ歩けくだけでこれだけ楽しめちゃうのだ。これはもう最高の暇つぶしと言うほかないだろう。

長沢川は田舎生まれの都会っ子

 ということで水路をじっくりと歩いてみようと思い立ったのだが、ただ闇雲に足を運んでしまっては面白さが半減してしまう。なんにでも事前準備が必要である。

 水路だけではないが、路地でも道祖神でも、いい塩梅での下調べがものをいう。調べすぎると歩く際に答え合わせをしているだけになってしまい、新鮮な気持ちがなくなってしまい面白くない。下調べとはまち歩きをちょっとだけ楽しくさせるスパイスみたいなものだ。

 まずは住宅地図で松本市街地を眺めてみる。名前の書かれている水路もあれば書かれていないものまで水色で描かれている。

 いろいろな水路を見つつ長沢川の流路も追ってみる。はっきりと流れが描かれているのは市民芸術館の東側から博労町と本町を隔てる緑橋まで。そこから駅前は暗渠になり、車両基地をくぐって駅の西側で再び顔を出し、田川に注いでいる。

 下流はわかった。では上流は? ここで松本市史から貴重なヒントを得られる。薄川の支流である、と。

 どうやら長沢川は薄川のどこかで分岐し、松本駅の南を横切って田川に注いでいるらしい。薄川は扉温泉とか美ヶ原の方が水源で、山辺、筑摩あたりを西に進む。この辺りはまあ郊外である。

 つまり長沢川は深志神社界隈ではわりと都会っ子のふりをしているが、ばりばりの田舎出身の水路なのだ。これは田舎から都会まで。彼の様々な表情が見て取れるかもしれない。

 おもしろそうだ。ちょっと長沢川の生きざまを見てみようじゃないか。そう照準を定めた。

 このくらい調べるといい具合に飽きてくる。なのでさっそく探検に出発しよう。

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